【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
「な、なんだって言うんだよ……。桐生が、なんで蜷深なんか……っ、」
「は?お前まだいたの?晴、やっぱりシャベル持ってこい」
「了解。5分待てる?」
「っ、勘弁……しろって………!」
山本くんは涙声で叫びながら必死に傘を拾う。
そして、私には目もくれずに猛スピードで逃げ出していった。
完全に山本くんの姿が見えなくなった瞬間、握り締めていた手の力がへなへなと抜けていく。
「だから、やめとけって言ったろ?」
「っ、」
さっきよりもハッキリと通る声。
ふと顔を上げれば、怒ったような、困ったような、そんな表情をした桐生秋十が、私を雨から守るように傘をさしだした。
忠告のような言葉が今さら重くのしかかる。
「な……んで、助けてくれるの……?こんなの、私一人で……平気、」
俯いて言いかけた直後だった………。