【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。




ーーードサッ


桐生秋十の手からカバンが落ちて、水溜まりが小さな飛沫をあげる。


かと思えば、その傘を持たない手は、私の後頭部へと回されて……。



「どこまで意地っ張りなんだよ……」



ポツリ、と。

独り言のように漏らした声。


ゆっくりとそのまま胸の中へと引き寄せられた。



「震えてるクセに。俺の前で、その強がりが通用するとでも思ってるわけ?」



言葉とは裏腹に、ポンポンと頭を撫でる手があまりにも優しくて。


叫びたいくらいの悔しさも、泣きたくなるほどの怒りも、さっきまでの怖さも消えていく。



「……っ、」



身体の奥底から何かが込み上げてきて、私は無意識に桐生秋十のシャツをギュッと掴んでいた。



「………お前ムカつく。人の気も知らないクセに」



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