【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
「ふーん。いじめられっこのお前が告白ね?」
うぅ……。
目を細めて私を見下ろしてくる。
腕を組んだ桐生秋十の表情にゾクリと背中が震えた。
“いじめられっこ”……って。
「アンタが私をいじめてたんでしょ……!?」
ーーー桐生秋十の正体。
それは小学四年から卒業までの間、私に意地悪なことばかりをしてきたいじめっこ……。
冷たい態度、意地悪な言葉、私を睨む黒い瞳。
何がそんなに気に入らなかったのか知らないけど、私だけに集中的に嫌がらせを繰り返してきたんだ……。
ーーー“お前が、俺に勝てるわけないだろ?”
絶対君主の大魔王だったこの男の台詞が、今も耳に残ってる……。
物は投げるは傘は隠されるは、文集は破かれるは、帰り道の待ち伏せはコイツの得意技だったっけ。
中学に上がってからも同じクラスだった私は、ひたすら無視を決め込んで、三年間一切口をきかなかった。
ーーーー“お前、ムカつく……”
それでも、容赦なく放たれる冷たい声。
特に忘れられないのは、五年生の林間学校の夜。
ああ、思い出すのはもうやめよう。
きりがないし、気分が悪くなるだけだ。
私は世界で一番、桐生秋十が大嫌いなんだから。