【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。




不意に顔を上げると眉根を寄せた桐生秋十が、私の方へ歩いてくる。


途端に心臓がざわざわと騒ぎだした。

チョコレート色の髪が、白いTシャツが、潮風に揺れる。



「ガラスとかも落ちてんだから、怪我したら危ないだろ。よく見ろよな?」


「わ、わかってるよ……っ、」


「ったく。ほら、足見せろよ?」


「は、はい………?」


「今怪我したかもしんねぇだろ?早く」


……と。

私の前に片膝をついてそっと見上げてくる。

ドキリ……。

黒い瞳が太陽の眩しさに目を細めた。


周囲に目をやれば、そんな光景でさえ絵になる桐生秋十を、他の女子が恋に濡れた瞳で見つめていることがわかる。


ちょ、ちょっと、待って………。



「怪我してないし……平気だから……っ、」



パッと身体を引いた私を訝しげに見つめる。


「……お前、なんか明らかに変だろ?挙動不審ってかんじ?」


「ちょ……ちょっと、」



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