【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
「言わなかったら……なに?大嫌いって、私が言わないと、やっぱりおかしい……?」
頭に乗せられたタオルが私の視界の隅で揺れる。
……私の心も、ゆらゆら揺れている。
「おかしいだろ……、」
砂を踏む足がさらに私へ近づいてくる。
「そ、そうだよね……大嫌いじゃないって、私が言うのがおかしいよね」
私は桐生秋十に対して大嫌いが口癖だったんだから、今さらこんなことを言う方がおかしいのかもしれない。
それなのに、私はどうして、傷ついたような気持ちになるんだろう……。
「いくら俺だって……」
……と、低い声で言いかける。
俯く私の目線に合わせるようにかがんだ。
長い前髪が潮風にサラリと流れる。
「お前にそんなこと言われたら、期待すんだろ……」