【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
弾けるように顔を上げる私。
視線を動かせば、タオルに隠された私の顔を覗き込むようにして、首を傾けていた。
困ったような、怒ったような曖昧な表情。
至近距離で囁かれた声。
「なんで、期待なんてするの……?」
ドキン、ドキン……と胸が早鐘を鳴らす。
暑い暑い夏の空に溶けてしまいそうな私の声。
「私のことを、いじめるくらいムカつくんでしょ……?なのに期待とか……。私への態度も……どうして、そんなに昔と違うの?」
ずっと疑問だったんだ。
汗の吸い付いたTシャツの上から、ドクドクと脈打つ心臓にそっと手を当てる。
同時に、伏し目がちな表情をした桐生秋十の手が、私の頬へ触れる。
ぐんっ、と体温が上昇していく。
「いくら嫌われても、俺はずっとお前に触れたかったよ」
ーーー絞り出すような声に、鼓膜が震えた。