【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
「でも、いくら晴を傷つけたくないからって、物投げるのはダメだったかなぁ?」
特にミカンはダメだよね、食べ物だし……と冗談っぽい口調で笑い飛ばしたけど、その天井を見つめる瞳が潤いを持つ。
「やめてって叫ぶべきだったのもわかってるんだけど。口より先に手が出ちゃったのよね……、」
ヘヘッと笑ったその顔は心なしか晴れ晴れとして見えた。
「上履きは痛かっただろうね?」
「だろーね?」
顔を見合わせてクスクス笑い合う私達。
「はぁ。物投げるなんて。なんか、わたし、誰かさんみたいね?」
「えっ、」
それって………。
いやいや、まさかね?
アイツはいじめっこだったんだから、晴くんを守りたいがために物を投げていたひーちゃんとは違うんだよ。
声に出して言えない私は心の中で呟く。
「なーんてね?」
「っ、」
戸惑う私を見るなり、ひーちゃんは桐生秋十の口癖を真似て、私に笑いかけた。