【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
はぁ……と。
心底深い溜め息が聞こえてくる。
「これで二回目なんだけど?」
「えっ?二回目?」
静けさを取り戻した夜の中。
まだ心が震えたままの私に力を抜いた声が落とされた。
「忘れたのか?お前のこと探しにきたの、これで二回目だろ?」
「……、」
桐生秋十は、覚えてる。
林間学校の夜のことを。
すると、息を吐くように笑う気配がした。
「泣きたいなら泣けば?」
「……な、泣きたい?」
どこまでも私を見透かすような言葉に、桐生秋十の顔を見上げれば、真っ直ぐな瞳が返された。
「そんな顔してんだろ?」
「してないよ……っ、勘違いだから」
「嘘つけ。泣きそうな顔してるクセに」
「っ、」
月に照らされた桐生秋十の瞳は、私の嘘さえも簡単に見抜いてるみたいだ。