【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
ーーーー“なんで逃げるんだよ?お前は悪くないだろ?”
一人逃げ出した林間学校の夜のことを思い出す。
私を見つけた桐生秋十の真っ直ぐな声。
たった一人……。
私の気持ちを汲み取ってくれたようで。
うずくまる私に差しのべてくれた手が、
ーーーー“一緒に、戻るぞ?”
言葉が、温かくて。
大嫌いなのに、その手を求めていた五年生の私は。
ーーーー“離すんじゃねぇぞ……”
その手を、ギュッと握り締めたんだ。
思い出したその声に、本当はあの時も泣いてしまいたかったんだってことに、気づいた。
だから、ずっと思い出したくなかった。
「泣いていいよ」
「……っ、」
それなのに、今……再び私を見つけてくれて。
涙でぐちゃくちゃで、嗚咽する私をこうして抱き締めてくれる。
ねぇ、どうして、何も聞かないの……?
「……お前のせいじゃないよ」
どうして、そうやって、私の心を守ってくれるんだろう。
どうして………。