【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
「き……桐生秋十って、バカなの……?」
「は?」
動揺を隠しきれない私はゆっくりと離れる。
私は、そんなアンタを無視してきたんだよ?
三年以上……ずっと、ずっと。
涙が込み上げてきて、ぐっと堪えた。
「てかさ、いい加減フルネームで呼ぶのやめろよな?」
「……だって、なんかもう、ずっとこうだし」
「名前で呼んでくれてもいいだろ?」
「……、」
「なーんてな?」
私が口ごもってしまうといつもの口癖で冗談っぽく笑った。
そして、とても自然に、俯いた私の手をさらって歩き出す。
まるで、初めてそうしてくれた時のように。