【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。






ーーー終業式まであと数日。


昨日のことがあったせいか颯太とはいつもみたいに話せなかった……。


お互いに目が合っても自然と逸らしたり。

当然、ひーちゃんにはお見通しだったらしく。



理由を聞かれてようやく話した私にひーちゃんは、「恋の相手は選べないからね」と寂しげに声を落とした。


その意味が、今さらわかってしまう。



ーーー恋って。

気づいたらもう恋におちてるものなんだ。



「仁菜、ちょっと来てくれないー?」



唐突、聞こえたお母さんの呼び声に部屋を出る。



「……えっ!お母さん、これどうしたの?」


「ふふ。お母さんが昔着てたんだけど、お直しに出しててね。今日、仕事のあとに受け取りにいったのよ」



狭いリビングの壁に掛けられていたのは、ひまわりの柄の白い浴衣だった。


淡いブルーの帯が夏らしくて涼しげだ。



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