【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
*
ーーー終業式まであと数日。
昨日のことがあったせいか颯太とはいつもみたいに話せなかった……。
お互いに目が合っても自然と逸らしたり。
当然、ひーちゃんにはお見通しだったらしく。
理由を聞かれてようやく話した私にひーちゃんは、「恋の相手は選べないからね」と寂しげに声を落とした。
その意味が、今さらわかってしまう。
ーーー恋って。
気づいたらもう恋におちてるものなんだ。
「仁菜、ちょっと来てくれないー?」
唐突、聞こえたお母さんの呼び声に部屋を出る。
「……えっ!お母さん、これどうしたの?」
「ふふ。お母さんが昔着てたんだけど、お直しに出しててね。今日、仕事のあとに受け取りにいったのよ」
狭いリビングの壁に掛けられていたのは、ひまわりの柄の白い浴衣だった。
淡いブルーの帯が夏らしくて涼しげだ。