【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
男の子とお母さんが手を繋いで歩き出す。
その後ろ姿を見送った秋十は、踵を返すと河川敷を抜けていく。
追いかけなきゃ……。
今、追いかけなきゃ……
秋十は、もう二度と振り返ってくれないかもしれない。
もう、きみの声が聞けないかもしれない。
弾かれたようにこの場から足を動かしても、再び押し寄せる人の波に視界が塞がれて。
あっという間に、秋十の姿が見えなくなる。
「秋十……!」
こんな小さな声じゃ届かない。
無我夢中で走ってもボロボロの足じゃ全然追い付けなくて。
下駄なんて、もういらない。
脱ぎ捨てて走ると、もうずっと先に秋十が行ってしまったあとだった。