【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。




「秋十……っ、」


まだ遠いけれど。

でも、お願い……私に。

私の声に気づいて……。


その横顔がこっちへと向く、寸前、



「秋十ーーー、」



ーーードーンッ!!!


見計らったかのように夜空に咲いた花火。

私の声を掻き消すには十分で。



そっか……。

今年は花火が打ち上がるって言っていたっけ。

河川敷からは歓声が沸き上がっている。


もう、届かない……。


それってこんなに苦しいことなんだね。


鼻の奥がツンと痛くて、足元を見つめる視界が、瞬く間に滲み出した。


もう、秋十の姿さえ見えなくて俯いた。


そこにいるのかさえ、もうわからない。



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