【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
「だから……っ、もう、思い出から逃げないよ」
ようやく声にして伝えれば、花火が咲いた夜空を背負う秋十の表情が、みるみるうちにぼやけて見える。
喉から何か込み上げてきて、瞳の奥が熱くなる。
私の声、秋十には届いたかな……。
「バカ……」
絞り出すように秋十が呟いたと同時。
私の頭の後ろに回る手。
そっと、秋十の胸の中に抱き寄せられる。
「強がってないで、そうやって素直に泣けばいいんだよ……意地っ張り」
「っ、」
その言葉を合図に、私の瞳からは、堰を切ったように涙が溢れ落ちる。
口から漏れる嗚咽を抑えきれずに私は秋十の胸に顔を埋めた。
「強がって下向いてるお前なんか、俺は大嫌いだからな……」
いつもの甘い香りはしなくて、打ち上がる花火のせいで煙が鼻を刺す。
だけど、なんだかそれが嬉しくて。
秋十と二人で……
この河川敷にいられることが私は嬉しい。