【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
言い当てられたことに恥ずかしくなって、無言のまま立ち尽くす私を、怪訝な顔でジロジロと見てきた。
「名前は………?」
「え……?私……蜷深仁菜……」
「になみ にいな………?」
……と。
相変わらず眉を潜めたまま私を見る彼は、名前を繰り返した。
「私の名前、言いにくい名前だって言われるけど、でもね……っ、」
「お、おいっ!」
お父さんがつけてくれた名前なんだよって言いたかった。
けど、それよりも早く再び涙が溢れてきた。
名前も知らない男の子は先ほどよりも数倍ビックリして。
可愛らしいアーモンドアイのわんちゃんまで私を見つめ、くぅんと高い声で鳴いた。
「泣くなよ……っ、てか、なんで迷子くらいで泣くんだよ!」
「だって……っ、お父さんが……、」
「っ、ああ、もう!泣くな……!お父さんがどうしたんだよ!」
あたふたしながら、必死に慰めようとしてくれる。
「っ、お、お父さんに会いたい……」
なぜか私は、たった今出会った名前も知らない男の子に、ボロボロと泣きながら本音を零していた。