【完】強引なイケメンに、なぜか独り占めされています。
「わかったから……泣いてもいいから、とりあえずこっち来い!」
「……わわっ!?」
そう言って、いきなり私の右手は男の子にさらわれた。
「ここ、夜になると“へんしつしゃ”が出るって近所のおばちゃんが言ってたんだよ」
「ヒッ……!」
男の子の言葉に身震いを起こす。
そして住所はどこか聞かれた私は三丁目と告げる。
すると、とても自然に私の手を引いていくから、そのまま私は男の子とわんちゃんと一緒に歩き出した。
「……父さんに会いたいって、会いたいなら会いにいけばいいだろ?」
「……っ、去年の夏……死んじゃったの、」
その瞬間、私の手を握る男の子の手はギュッと力が入った。
ハッとして私を見つめた男の子は、目をまん丸にして驚いたような顔をしていた。
いきなりお父さんが死んじゃったって言ったから、ビックリさせちゃったのかもしれない。
けど、理由を聞かれることはなく、男の子はしばらく無言のまま速度を上げて歩いた。
「お前の母さん、絶対心配してるぞ……」
堤防を降りると住宅街が見えてきた。
「……うん。泣き止んだら帰ろうって思ってたの。私が泣いてるとお母さんが、心配するから」