言えない言葉
学校を出・俺はひたすら物音一つない空間を進み続ける。
心の何処かでは、こんな訳の分からない世界に只一人居ると考えただけで発狂しそうな気持ちもあるのに、不思議と俺は顔色一つ変えず、ゆっくりと進み続けるだけ。

相変わらず、外の世界は静けさだけで 何も居ない、聞こえない。
虫も動物も鳥も、人も。動くものは、俺以外居ないかの様に。

気がつくと、辺りは薄暗くなっていた。

立ち止まってみると、朝から歩き続けていた足はまるで棒の様に曲がらない。思わず、その場にへたりこんだ。

辺りを見渡すと、そこは確実に俺の知らない街だった。

錆びれ、最早風化してしまった家々がずらりと軒を連ねていた。 人の気配など、する筈がないのに・何故か視線を感じた。

恐怖とか・そんなものはなかった。只、一人 その視線の先を追った。

すると、そこには幼いおかっぱの女の子の姿。

否、人の形をした何かがこちらを窺っている様だった。 黒い影の様に、只そこに存在するだけの物体。

何も浮かばない筈の表情は、白い三日月形の口が甲を描き、気味の悪い笑顔になった。

そんなものが見えた気がしたが、次の瞬間・瞬きをした次の瞬間にはもう消え去っていた。

後に残る様な、囁きを残して。



『ともだち、あなたとわたしはともだち』
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