断罪アリス
「朱鷺、此処に来るなら言いなさいよ。勝手に来て怒られるのは私なんだから」
アリスさんは眉をひそめて、ため息を吐きながら頭を掻いていた。
そうか、此処はアリスさんの……藤邦が経営する研究施設なんだ。
秘密裏に行われている実験の裏には医療製薬分野に精通する藤邦がいるのだから、藤邦の研究施設がそれに使われてもおかしくはない。
「俺が怒られる訳じゃないし。それに、藤邦の跡取りが来て、誰も怒れる訳が無いだろ?」
「……いるじゃない、一人」
「あー……。まあ、良いか」
風間さんには彼女のいう人が分かっているようだけど、俺にはちんぷんかんぷんだ。
俺は風間さんに引き摺られるようにしてその建物に入った。
建物の奥に進むにつれて、何処か重苦しい雰囲気が漂ってくる。
そして、足を止めた時にはまるで銀行の金庫のように頑強なドアが目の前に聳え立ち、ドアにはパスワードを入れる機械と虹彩認証が設置されていた。