断罪アリス
「でも……」
「ちなみに何回も同じ事聞いてこられる方がイラつく。俺は本当に和泉のことを怒ってないよ」
ようやく安心したのか、和泉はほっと肩を落とした。
「でも、驚いたよ。まさか、和泉がアリスさんの……藤邦の血族だったなんて」
和泉は困ったように笑うと、頬を掻く。
藤邦みたいに大きな一族だと分家とか多いだろうから、説明するとなるとややこしいのだろう。
俺が「説明は良いから」と言うと、和泉は「ややこしいからしたくない」とげんなりとした顔で答えた。
やっぱり、ややこしいんだ……。
予想と合っていて、つい俺は笑ってしまう。
急に笑い出した俺に和泉は唖然としていたけど、つられたのか俺と同じように笑い出した。
大丈夫、俺は笑えてる。
これから何が起きようとこの笑顔を忘れてはいけない。
もし、忘れてしまう時が来たら、それはもう≪俺≫では無くなってしまった時。
殺人鬼となった時だ。
そんな時が来るのはまだまだ先だ。
そう思っていたいのに、胸の何処かで感じていた。
俺が俺じゃなくなるのはそう遠くない。
──と。