断罪アリス


羽取さんと黛。



二人は臨戦態勢を取っていて、どちらから攻撃を仕掛けるか分からないくらい殺気立っている。




その空気に背中に冷や汗が伝った。




──と、同時に胸が大きく跳ねた。





胸が苦しい……。



「ぅあ……ぐ……っ」




「コトリ君!?」





突然胸の苦しさにしゃがみこんで胸を押さえると、アリスさんが駆け寄ってきた。




「天河君!」




佐滝さんが肩を掴み、倒れないように身体を支えてくれる。




胸が苦しい……。



息が出来ない……。



肩が揺れるくらいの荒い呼吸に、尋常ではない身体に異変を感じる。



ふと、脳裏に目の前の光景ではない映像が浮かぶ。



濃い霧の中を歩き、何かを探している。




『≪僕≫は探してるんだよ』




頭の中で≪俺じゃない俺の声≫が囁いている。




≪僕≫は何を探してる?



何を探して、こんな濃い霧の中を歩いている?





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