断罪アリス
「いででで!」
力任せに頬をつねるアリスさんの手を掴むと、彼女を睨み付けた。
「何するんですか、アリスさん!痛いじゃ──」
「悲しいくせに、泣かないなんて馬鹿じゃないの?」
アリスさんは俺の言葉を遮るようにそう言った。
悲しい?
うん、悲しい。
でも、俺が泣いたって琴梨さんが戻ってくるわけでもないし、琴梨さんの両親の悲しみが癒える訳でもない。
だから、俺は泣かない。
──つもりだった。
「……私だったら、自分が死んだとき好きな人には泣いてもらいたいな」
「え……?」
「だって、その方が自分は愛されてたんだって実感できるでしょ?」
アリスさんはまっすぐな目で俺を見つめてきた。
……死んだ人にそう言った感情があるのだとしたら、琴梨さんは俺に泣いてほしいのかな?
こんな俺が泣いて、琴梨さんは愛されてたんだって実感してくれるのかな?
「まあ、つべこべ考えずに泣け」
急に男らしい言葉づかいになったアリスさんがおかしくて、つい苦笑いを浮かべてしまう。
でも、まあ……。