断罪アリス
「──はい、ハンカチ」
それからしばらくアリスさんの腕の中で泣いた俺は、彼女から差し出されるハンカチを受け取れずにいた。
いくら泣けと言われたからと言って、二十歳の男が年上の女の人の腕の中で泣くとか何とも言えない気持ちだ。
ハンカチを受け取ろうとしない俺に苛立ったのか、アリスさんは強引にハンカチを目に押し付けてきた。
「いだい!眼球が潰れる!」
「潰れない!さっさと涙拭って、帰るよ」
……何か、アリスさん怒ってる?
俺はさっきの涙とは違う涙をハンカチで拭いながら、ズンズンと歩き出すアリスさんを追いかけた。
雨は通り雨だったらしく、今は降っていない。
それどころか、青空まで見えてきていた。
上を向いて歩いていたらアリスさんが足を止めたことに気づかず、彼女の背中に突っ込んだ。
「痛っ」
アリスさんが転ばなかったのかは良いけど、彼女の頭がちょうど俺の顎辺りにあったからそこを負傷した。
「アリスさん、急に止まらないでくださいよ……」
顎を押さえながら訴えるけど、彼女は前を見据えるだけで俺の方を見なかった。
不思議に思って、俺もアリスさんが見据える方に視線を向けた。