断罪アリス
思えば、俺は母さんのことを何も知らない。
母さんを一番知っているのは……。
すると、玄関が開く音がした。
多分、父さん達が帰ってきたのだろう。
俺はスマホをポケットに入れると、リビングに向かった。
リビングからは明かりが差し込んでいてドアを開ければ、父さんが疲れたようにソファーに寄りかかっていた。
「おかえり、父さん」
「ああ、天河……。昼間のことは藤邦様から聞いている。怪我がなくて良かった」
父さんは俺の方を振り向いて、ホッとしたような顔をした。
「なず姉は?」
「七砂は泊まりだ。藤邦様は?」
「もう寝たよ。それより、何か食べる?」
「いや、大丈夫だ」
父さんは浅く息を吐くと、もう一度ソファーに寄りかかった。