断罪アリス
俺は急ハンドルを切ると、そのバイクの後を追った。
そこの道は渋滞している道とは違う道で、車は疎らだ。
むしろ、その疎らが運転しづらい。
切碕達に追いつくためにスピードを出そうとすれば、前には車が等間隔に走っている。
スピードを維持しながらそれを抜く技術は俺にはまだない。
でも、アリスさんの為にも風間さんの為にも追い付かないといけない。
どうするべきか……。
『天河、僕に代われ』
ふと、これまでずっと静かだった≪僕≫が俺の中で動き出した。
──代わってどうする?後ろにはアリスさんがいるんだ、お前に代わる訳にはいかない。
俺は≪僕≫に心の中で語りかけながらどうにか車を交わしながら、切碕に追い付こうとする。
が、距離は縮まらない。
『大丈夫、彼女には何もしない。いや、お前の……、天河の嫌がるようなことはしない』
≪僕≫の突然の変化に、俺は動揺していた。
あれだけ俺の体を奪おうとしていたというのに、今はその様子が感じられない。
──彼女に怪我させたら、許さないからな……。
『分かってる。僕は嘘は吐かないよ』
俺は意識が遠退くのを感じ、一瞬だけアクセルを緩めた。