断罪アリス
「お前は藤邦の跡取りだっていうのに、探偵なんぞしてプラプラして……。たまには義姉さんに仕事を──」
「教えてもらわなくても知ってるし」
「っ!?お前、また義姉さんのパソコンをハッキン──」
「あー、叔父さん。話は院長室でしようか。じゃあ、コトリ君、帰るとき連絡ちょうだいね」
アリスさんは志岐院長の言葉を遮るように言うと、彼の背中を押してその場からいなくなった。
「相変わらず自由人だな、あのお嬢は」
まあ、アリスさんが自由なのは今始まったことではないから気にしない。
二人の背中を見送ると、俺はなず姉と共に母さんが入院する階へ向かうためにエレベーターに乗り込んだ。
そして、ナースステーションで面会用の書類を書いていると、マナーモードのなず姉のスマホが鳴った。
ディスプレイを見たなず姉は険しい顔をする。
「悪い、呼び出しだ。天河、母さんの見舞いはお前だけで行け」
「え?あ、分かった」
なず姉はスマホをポケットにしまうと、来た道を戻っていった。