断罪アリス
「母さん、入るよ」
ナースステーションで面会の許可をもらうと、母さんの所へ向かった。
閉められたドアの向こうに声をかけると、「どうぞ」と穏やかな声が聞こえた。
ドアを開けると、母さんの白いベッドの上で本を読んでいた。
でも、俺が来たことで、本に向けられていた目線は俺に向けられる。
「あら、七砂は?一緒に来るってあの人が言ってたけど……」
「何か仕事の呼び出しが入ったらしいよ。あ、荷物上に上げとくよ」
「うん、ありがとう」
俺はベッドの脇にある棚に荷物を入れた。
荷物をしまうと、来客用に用意された椅子に腰掛ける。
「体はどう?まだ痛むの?」
「もう平気よ。痛みももうないわ」
母さんは穏やかに笑った。
その笑顔は切碕の共にいた頃に見た悲しそうなものとは違って、昔見た優しいものだった。