断罪アリス
そんな目を向けられても、彼女は揺るがない。
「彼は私の息子よ。……意味が分かるわよね?」
その言葉に、紅い瞳の男は声を上げて笑った。
一頻り笑ったかと思うと、背凭れに腕を乗せて天井を仰ぐように顔を上げた。
「貴女の息子かぁ……。なら、殺せないね。殺さないで、仲間に引き込もうか」
「あの子を引き込むには苦労するわよ。あの子は私に似て、気難しいの」
恍惚とした彼を、美しい女は冷たい眼差しで見下ろした。
「そんな貴女をたらし込んだのは僕だよ。彼もこちら側に引き込むのも容易い」
「……本当に貴方は下衆ね」
虫けらを見るかのような彼女の眼差しに、紅い瞳の男はクスリと笑い、
「それは僕には褒め言葉だよ、潮姉さん……」
穏やかな声音で言った。
姉弟とは思えない程殺伐とした雰囲気に、周りにいる六人は何も言わないまま二人を見ていた。
羨望にも似た崇拝の眼差しで──。