Spice‼︎
その頃、風間は行き場を無くしていた。

マンションから追い出され
荷物は風間が居ない間にトランクルームに預けられていた。

風間は友人がほとんど居ない。

今まで友人だと思ったほとんどが風間の金目当てだからだ。

だが、風間にも大学時代のたった一人の貴重な友人がいる。

彼の家で寝泊まりして居たが
友達の彼女が来る日もあって
そんな日は近くの24時間営業のスパに泊まったり
カプセルホテルに泊まったりした。

貯金はあるが母の治療費を打ち切られた時のために取ってある。

何度も梨花の部屋の前まで来たが
訪ねる勇気は無かった。

それでもその夜はどうしようもなく梨花が恋しくて
勇気を出して梨花の部屋のインターフォンを鳴らした。

出てきたのはヒロだった。

「り、梨花さんは?」

風間は梨花に既に男がいると聞いては居たが
いざ目の当たりにするとかなりショックだった。

しかも相手は梨花の行きつけの店のあのバーテンダーだ。

「あ、もしかして風間さん?」

ヒロは風間よりも背が高く、
なかなか良い男だし
何より男から見てもセクシーだ。

「はい。梨花さんは居ますか?」

ヒロは勝手に部屋にあげて良いものか少しだけ迷ったが
梨花の気持ちを知っていたので風間に言った。

「まだ帰ってませんけど…

良かったら部屋で待ってて下さい。」

「あ、いえ。」

風間は断ったが明らかに名残惜しそうだ。

ヒロは気を利かせ部屋に入るように再度誘ってみる。

「心配しないで下さい。

梨花さんと俺はそんなに深い関係じゃありませんよ。」

「でも…一緒に住んでるんですよね?」

「ただ一緒に居るだけですよ。
梨花さんも俺も寂しがり屋ですからね。」

風間はヒロに言われて
結局、部屋で梨花を待つことにした。


< 118 / 265 >

この作品をシェア

pagetop