Spice‼︎
「僕が出ます。」

風間がそう言って席を立った。

梨花は動けなかった。

桐原の顔を見たら決心が揺らぐからだ。

風間がドアを開けると桐原はいきなり入ってきた。

風間を外へ押し出してドアに鍵をかけた。

梨花の腕を掴み、怖い顔で梨花を睨みつけている。

「き、桐原部長…」

「風間と寄りを戻したからオレはもう要らないってか?」

梨花はその手を振り払って

「そうだよ。」

と睨み返す。

「嘘つけ。

聞いたぞ。

アイツとも別れるんだって?

結局はあのバーテンなんだな?

あの男に本気になったのか?

お前はそんな女じゃないだろう?

愛なんかに振り回されたりしないで
快楽だけ欲しがって…
いつもブレなくて堂々としてるくせに
ホントは情に脆くて簡単に惚れた男を忘れたりできない女だ。」

「バカじゃないの?
私は簡単に本気になったりしない。
もともと遊びだったし…割り切って来たじゃない?

もう桐原部長には飽きたの!

風間くんだって自分の仕事が危うくなるくらいなら必要ない。

そう思っただけ。

ヒロくんと一緒に居るのはラクだからよ。

私は今でも誰も愛さないし、
愛のために何かを捨てたりしないの。」

桐原がこんなに自分に執着するとは思わなかった。

いつだって冷静で感情的になったことなど一度も無かったからだ。

桐原自身も自分の気持ちが信じられなかった。






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