Spice‼︎
店が開いてしばらく経っても梨花は姿を現さなかった。

ヒロは心配になって、手が空くと梨花の携帯にかけてみたが梨花は電話に出なかった。

嫌な予感がするが、客のいる店を放り出して様子を見に帰るわけにもいかない。

ヒロは仕方なく風間に連絡した。

「すいません。

梨花の様子を見に行ってもらえませんか?」

近くの店でDVDのレンタルしようとしていた風間はびっくりして
何も借りずに梨花の部屋まで走った。

返してない合鍵で梨花の部屋に入ると
梨花は真っ暗な部屋で泣いていた。

「梨花さん?」

風間が梨花の顔を見て抱きしめる。

「こんなに泣いてどうしたんですか?」

「か…ざまくん…っ…?」

「何があったんですか?」

風間が突然現れて、梨花は戸惑ったけれど
風間にしがみつくように抱きつくと大声で泣いた。

風間はただ黙って抱きしめたまま
梨花が泣き止むのを待った。

落ち着くと梨花は風間に言った。

「桐原部長と別れられない。

あの人のことが好きで…どうにもならない。」

風間はガッカリしたが
結局最後に梨花は桐原を選ぶ気がしていた。

風間は何も言わずにただ側にいて
梨花を抱きしめていた。
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