Spice‼︎
風間は父親のところへ挨拶に出かけた。

日曜だというのにスーツを着て
気持ちを引き締め、父の書斎へ向かう。

扉を開けると老眼鏡をずらして父が風間の方を見た。

「どうした?呼んでもないのに来るなんて珍しいな。」

父親は相変わらず無愛想だが
子供が可愛くない親などいない。

新聞に目を通しながら話すのは
まともに顔を見るのが照れ臭いせいである。

「総務部はどうだ?

経営戦略部と違って地味ではあるが
会社にとってはどこも大切な場所だ。」

風間は思い切って言ってみる。

「今まで申し訳ありませんでした。

これからはお父さんの言うようにもっと経営者としての自覚を持って頑張ります。」

父親は読んでいた新聞から顔を上げた。

「今さら経営者として頑張るって?

もう遅い。

お前には到底無理だ。

女にのめり込んで、全てを捨てるなどくだらないことを言う奴に経営者など務まらん。」

それでも息子がやる気になってくれた事に父親は喜んでいる。

「しばらく、桐原部長の下で学ぶといい。」

「き、桐原部長ですか?」

「あぁ、明日から営業部に行け。」

風間はたった2週間で総務部から営業部に異動になった。

この人事があって桐原が次期社長になるという噂は覆った。

「なんだかんだ言って息子が跡を継ぐんだな。」

「桐原部長はどうなるのかな?」

桐原はこの人事に納得がいかず、
社長に話をしに行った。

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