Spice‼︎
「なぜ健斗くんを?」

「政宗くん、アイツはまだ未熟で経営者としては使い物にはならん。

でも…やっとやる気になってくれたんだ。

一つ面倒を見てもらえないか?」

桐原の顔が曇っていく。

社長はそれを察したように言った。

「もちろん君にはそれ相応のポストに就いて貰うつもりだ。」

それ相応のポストとはもちろん社長の事ではない。

このままで行くと自分は一生風間の下で働く事になる。

「わかりました。」

桐原は怒りでどうにかなりそうだった。

風間が急にやる気になったのも
不思議でならなかった。

何とか怒りを抑えて社長室を出ると
桐原は風間を呼び出した。

「急にどうしたんだ?

社長には興味ないって言ってたろ?」

「今でも社長なんか興味ありませんよ。

でも桐原さん…

梨花さんを利用して僕と父の仲を裂こうとしましたね。

梨花さんはそれで深く傷ついた。」

「お前だって俺の紹介で惚れてた女と付き合えたんだろ?

それを梨花に黙って…俺と共有してただろ?」

「自分が社長になる為だとは知らなかったからです。」

「そのために逢わせたワケじゃない!
梨花を幸せに出来ると思って逢わせたんだ。

結果的に俺が梨花を諦められなかっただけで…

お前に託すつもりだった。」

「それも社長になる為でしょう?
梨花さんがその事を知ってどんなに傷ついたかわかりますか?」

風間が急に後継者に名乗り出たのは
社長になりたい訳じゃない。

梨花の為だと桐原は思った。
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