Spice‼︎
バーに行くと風間は既にカウンターで梨花を待っていた。

ヒロが梨花に気がついて優しい笑顔で迎えてくれる。

「いらっしゃい。」

風間が振り向いて梨花を見た。

風間は少し髪を切ったようで前より精悍にみえる。

梨花が隣に座ると風間が少しだけ微笑んだ。

「お疲れ様です。」

「お父さんにちゃんと謝ったんだね。」

「はい。」

ヒロが梨花の前にキールを置いた。

梨花が微笑むとヒロも微笑んだ。

その様子を風間は黙って見ていた。

そして梨花に言った。

「ヒロさんといる梨花さんはいつも穏やかですね。」

「そう?
風間くんといる私はどんな感じだった?」

「最初はよく笑ってました。

でも…いつからか梨花さんはあまり僕の前で笑わなくなった。

今は…泣いてる時の方が多い。」

梨花は黙って風間の話を聞いている。

「桐原さんを…社長にはしませんよ。」

「うん…それで良いと思う。

あの人が諦めるかはわからないけど…

でも風間くんはそれで良いの?

あの家に入る事になるんでしょ?

風間くんの人生はこれから大きく変わってくと思う。

自由じゃなくなるし…他の夢を諦める事になる。」

「もう僕の夢は叶いませんから。

これで良いんです。」

その時の風間の悲しそうな顔を
梨花は一生忘れないだろうと思った。






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