Spice‼︎
「少し風に当たりませんか?」

風間がそう言って梨花は風間とバーを出た。

ヒロは梨花と別れる風間を見て
風間の辛い気持ちを察した。

出来る事なら桐原とは寄りを戻して欲しくない。

ヒロは桐原に渡すくらいなら、
梨花をこのまま縛っておきたいと思った。

梨花は風間と近くの公園を歩いていた。

寒い冬の夜、風間がここで梨花の手を握り、自分のポケットに入れて温めてくれた事をふと思い出した。

今は風間との間に20センチ位の距離が出来ている。

この20センチが梨花にとっては
とてつもなく遠い距離に思えた。

「梨花さん…ありがとうございました。

会社に戻って良かったです。

これでもう母の治療費の心配をしなくてすみますし
父とケンカ別れしないで済みました。

梨花さんと会えて、少しの間だけど…
一緒に暮らせて楽しかったです。

会社で顔を合わすことがあるとは思いますが…
未だに僕たちの噂も消えてませんが…
お互い割り切って接することにしましょう。

梨花さんのオモチャは今日で卒業します。」

梨花はそれを聞いて我慢していた涙が溢れそうになった。

「送ります。」

風間はそう言って梨花の家に向かって歩き始めた。

梨花は黙って風間の後ろを歩いた。

あっという間に家に着いた。

風間を引き止めることは出来なかった。

「…ありがとう。

風間くん、頑張ってね。

立派な社長になってください。」

梨花はそう言って背を向けた。

するといきなり風間が背後から梨花を抱きしめた。







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