Spice‼︎
「これで最後にします。

最後にしますからもう一度だけ…」

そう言って風間が梨花にキスをした。

梨花は我慢していた涙を堪え切れなくなった。

そして風間は梨花の唇に余韻を残して
夜の街へと走っていった。

梨花はうずくまって泣いた。

風間も泣いていた。

思ったよりずっと梨花と別れるのは辛かった。

そして部屋に帰ると
バーボンをボトルのまま一気に飲んだ。

喉から胃が焼けるように熱くなった。

そして大声で泣いた。


ヒロが部屋に帰ると梨花は真っ暗な部屋で泣いていた。

電気のスイッチは付けずに、外から漏れる街の灯りを頼りに梨花に近づくと細い肩を抱いた。

梨花はヒロの胸に顔を埋めて泣き崩れた。

「梨花はこれで良いんだろ?

桐原さんとやり直すつもりなんだろ?」

梨花はまだ桐原を完全には許していない。

桐原を誰より愛していると気が付いても
桐原がしたことは簡単には許せなかった。

愛なんて永遠ではない。

今は止められない気持ちもいつかは褪せていく。

それに今の風間の気持ちを思うと
桐原と寄りを戻すなんて自分勝手な事は出来そうにない。

風間が自由を捨てたのに
自分が何も捨てないのは間違ってる。

梨花は自分の心を捨てようと思った。

「私は誰も選ばない。

桐原部長の事は好きだけど…あの人のところへは行かない。

例えあの人が全てを捨てたとしても…

私は桐原部長とは…」

「風間くんがそれを望んでる思う?」

「望んでなくても…桐原部長とはもう…」

梨花がまた泣いてそれ以上は言葉にならなくなった。

「梨花…それなら俺と一緒になるか?」

ヒロがそう言って梨花を抱きしめてキスをした。






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