Spice‼︎
そして桐原は気持ちを引き締めるように自分の頰を叩くと
家路を急いだ。
そして家の前で胸のポケット入れた離婚届を握りしめ
玄関の扉を開けた。
「お帰りなさい。」
冷たく渇いた妻の声を聞くのも今夜が最後だ。
「ただいま。
華菜…ちょっと話せるか?」
「はい。」
妻の華菜がリビングの椅子に座ると
桐原は対面の席に座って
離婚届を華菜の前に置いた。
「すまない。
これ以上ここに居るわけに行かなくなった。」
華菜は目の前の離婚届に驚くこともなく
「わかりました。」
とただ一言残して離婚届に判を押して戻って来た。
「それでどうするんですか?」
「会社も辞めるし、今夜ここを出る。
明日引越し屋が来るから荷物は明日になる。
俺の荷物はもともと少ないから大して時間はかからないと思う。」
「わかりました。」
「今まで悪かった。
ありがとう。」
「いえ。
こちらこそ、父が貴方に随分辛い思いをさせましたね。
今までお疲れ様でした。」
華菜はそう言うと自分の寝室へ入って行った。
桐原は荷物を纏めて、必要なものだけ持つと家を出て行った。
そして次の日の朝、出社すると
華菜の父である専務に華菜と離婚することを話し、
社長に退職することを告げた。
そして一ヶ月後、
桐原はみんなに惜しまれて会社を出て行った。