Spice‼︎
桐原は梨花の去ったベッドの上で
頭がまだ働いてない状態でただぼーっと座っていた。

確か梨花が自分を誘ったはずなのに
さっきまでこの腕の中に居たのに
起きてみるとまるで夢だったように姿を消していた。

逢いたくて、それでも素面じゃ逢えなくて
酒のチカラを借りて電話して来た梨花を愛しく思う。

ここは自分から梨花を誘うべきだと思ったが
梨花は何度かけても電話に出なかった。

「夢だったのか?
いや、確かにこの腕で抱きしめたよな?」

桐原は独り言を言いながら少し遅れて出社した。

麻美が桐原のシャツを見て驚いた。

昨日と同じシャツは無造作に置いた皺が目立って
なんともカッコ悪い。

麻美は近くの店でシャツを買って戻って来た。

「社長、こちらに着替えて下さい。

もうすぐお客様がお見えになる時間です。」

「あぁ、そうだな。

気が利くな。」

麻美の買って来たシャツを受け取り
着替えようとシャツを脱ぐと胸に梨花の愛した痕が赤く残っていた。

桐原はそれを見て少し幸せな気分になって微笑んだ。

そして着替え終わると麻美を呼んだ。

「1つ聞きたいんだが…
あれから風間に会ったか?」

麻美は少し焦って

「あ、…はい。勝手にすいません。」

「もしかして風間の女にもあったか?」

麻美はその質問に答えずに
逆に桐原に聞いた。

「彼女は社長の何なのですか?」

桐原は少し間をおいて

「…癒えない傷だ。」

とだけ答えた。
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