Spice‼︎
桐原が店に着くと
知ってる顔が何人かいる。

桐原は堂々とその席にやって来た。

「あ、営業部だった桐原部長ですよね?」

退職して三年経っても桐原を知らない社員は新人以外ほとんど居ない。

「おう、経理部か?」

「はい。電算課です。」

桐原に憧れてる男性社員はたくさん居る。

桐原がきて飲み会の雰囲気はガラリと変わった。

そんな桐原を見て多村は面白く無い。

桐原と多村は同期だった。

桐原は同期の中でも入社した時から常に光り輝いていた。

一流大出身で顔もスタイルもよければ仕事も出来る。

誰よりも早く出世して
専務の娘まで射止めた男だった桐原を知らない社員は居ない。

同期といえど最初から本社勤務の桐原と
三流大学卒の営業所からやっと本社勤務になった多村とは雲泥の差だったと言える。

多村は桐原と話した事もなかった。

桐原はこの中で一番偉そうにしてる多村を見て

「えっと…御社のOBの桐原と申します。」

と挨拶をした。

多村は

「存じてます。同期でしたから。」

とすこし腹立たしそうに答えた。

梨花は2人が同期だと聞いて少しビックリする。

多村は桐原よりずっと年上に見えた。

「3年前に退職されたんですよね?
今日はどうしてここに?」

桐原は梨花を見つめながら答えた。

「近くまで来たんですが…懐かしくて寄ったんです。

この店よく使ってましたから。

しかも知ってる顔に逢えて良かった。

藤城さん、お世話になりました。

お元気ですか?

相変わらず美しいですね。」

威張り散らしていた多村は桐原が現れて
急に肩身が狭くなった気がした。

< 203 / 265 >

この作品をシェア

pagetop