Spice‼︎
その夜、梨花は麻美に呼び出された。

「お話って何ですか?」

「私と話す事なんてあの人の事に決まってるでしょ?」

「桐原さんと付き合ってるって嘘だったんですね?」

麻美は決して二人の間には何もないと梨花の前では認めたくなかった。

「あの人が否定したの?

ずるい人ね。

それであなたはあの人と今どうなってるの?」

梨花は桐原と麻美との関係をまだ半分疑っている。

桐原の言うことは信用できなかったし
桐原はそういうことを平気でやってのける男だと知ってる。

「桐原さんの部屋でたまに逢ってます。」

「桐原の部屋に行ったの?」

「はい。」

麻美はかなりのショックを受けた。

桐原は決して麻美を自分の部屋に近寄らせなかった。

緊急の書類を届けに行く機会があっても部屋には来させず
近所のカフェまで出て来てそこで手渡した事があった。

一度身体を壊した時に訪ねて行ったが桐原は麻美を決して部屋に入れなかった。

「あなたも桐原と付き合ってるってこと?」

「…あの人にはそういう感覚は無いですよ。

付き合ってるって思っても
あの人にとって女はみんな多分…抱くだけです。

愛してるって言葉も抱くために言うし、
女は道具なんです。

欲求を満たしてくれたり
時には自分の夢のために利用する道具なんですよ。」

麻美は桐原をそんな風には到底思えなかった。

自分の知ってる桐原は社員を大切にするし、
抱くだけなら誰でもいいハズなのに
桐原はずっと梨花を思って麻美を遠ざけている。

「桐原はそんな人じゃありません。

よほど大事にされなかったんですね?

藤城さん、桐原と何があったんです?」

梨花はそれに答えずたった一言、呟くように言った。

「あの人は怖い人です。

これ以上は話したくありません。」

そう言って梨花は席を立った。

麻美は梨花と桐原の間にある深いキズの正体を知るのが怖くなった。
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