Spice‼︎
離れられない、離れたくない
梨花はもう手の届かない所へ行ってしまったと風間は思った。

次の日、桐原が梨花にプロポーズしたという噂が駆け巡り
梨花はまたみんなに話題を提供する立場になった。

「藤城さん、桐原さんと結婚するの?」

梨花は何人もの人に聞かれ、その度に困り果てた。

「いつから付き合ってたの?」

興味津々で皆が聞いて来るが、梨花はホントの事を言えない。

「付き合ってませんし結婚もしません。」

「またまたぁー。
桐原さんのプロポーズ断るなんてあり得ないですよー。」

梨花は質問攻めに疲れて、息抜きをしに屋上へ行き、1人ため息をついていた。

桐原の考えてることがよくわからなかった。

どうしてみんなの前であんな事をしたのか…

そんな事をすれば梨花が困るとわかってるのに…

「梨花さん。」

屋上で気分転換をしていると後ろから梨花を呼ぶ聞き慣れた声がした。

「…風間くん。」

「昨日は大変でしたね。」

「聞いたの?」

「いえ、見てました。

桐原さんが梨花さんにプロポーズしてキスした所まで。」

梨花は風間にも見られていたと知って
ため息しか出なかった。

「あれってプロポーズなのかな?」

「僕への警告でもありますね。

梨花さんはもう自分のモノだって念を押された感じです。」

「あの人が何を考えてるのかわからなくなる。」

風間もそんな梨花を見つめて、溜息をつく。

「梨花さんは幸せになれますよ。」

「風間くんは…幸せ?」

風間はその問いに答えられなかった。

「僕の事はもう忘れてください。

僕も梨花さんを忘れます。」

梨花は胸が痛んだが、もう風間は帰って来ないのだ。

あの後ろ姿を見た時、
風間は梨花との関係を清算したのだ。

「わかってる。

でも必ず幸せになってね。

風間くんが幸せじゃないと…私も幸せにはなれない。」

風間は頷いて、

「じゃあ。」

と行って屋上から去って行った。

梨花の頬を冷たい風が通り過ぎる。

深呼吸すると仕事へと戻って行った。



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