Spice‼︎
梨花はその電話を取らなかった。

もう少しこのままで居たかった。

風間は梨花を見つめたまま様子を伺う。

梨花が迷っているのがわかった。

風間はこのまま強引に抱いてしまいたいと思ったが
そんなことをしたらまた梨花を惑わせる事になる。

「梨花さん…送って行きます。
桐原さんを呼んで下さい。」

風間はそう言って梨花から離れた。

梨花もこんな風に流されてはいけないと思って
風間の首に回した手を離した。

「ごめんね。迷惑かけて…。」

「いえ、大丈夫ですか?

明日は休んで下さい。

僕が多村課長に話しておきます。

それと今日の多村課長の事は僕に任せて下さい。」

「うん。」

梨花は帰る支度をして、
風間の部屋にある自分の荷物と一緒に風間の車に乗った。

風間が昔のように梨花のシートベルトを締めようと
身体を近付けただけでドキっとした。

風間はその反応が伝わって

「すいません。いつもの癖で…」

と戸惑った。

車の中では2人とも無口になった。

何か口にしたらお互いの理性が崩れそうで
何も言えなかった。

梨花の部屋に電気がついてるのを見て

「桐原さん、来てるみたいですね。」

と言って部屋までは送らずに
マンションの前で別れた。

部屋にいるのは桐原ではなくヒロだ。

梨花が桐原の所へまだ行けないでいるのを風間は知らずに帰って行った。
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