Spice‼︎
長い時間が過ぎた。

離れたくなくて何度も身体を重ねた。

空が白んできて、梨花は風間からやっと身体を離す事が許された。

風間はもう一度梨花にキスをした。

「送っていきます。」

風間もベッドから身体を起こした。

「1人で帰れる。」

梨花はそう言って服を着始める。

風間はその身体をずっと見ていたかった。

そして梨花の手を取り

「やっぱり送らせて下さい。」

と一緒にマンションの部屋を出た。

梨花の部屋までの道、
2人とも無口だった。

何も言葉が見つからなくて
ただ握った手だけが熱を帯びてる。

部屋の前に着くと
梨花は風間に言った。

「幸せになって下さい。」

風間はその言葉で胸がいっぱいになったがもうどうする事も出来なかった。

「梨花さんも必ず幸せになって下さいね。」

梨花は頷くと風間と繋いだ手を離して
自分の部屋へと向かっていった。

梨花は踵を返した瞬間、
涙が溢れて振り返る事も出来ずに
真っ直ぐ自分の部屋に向かった。

風間には後ろ姿しか見えなかったが
梨花は多分泣いてるだろう…とわかっていた。

もう泣いたとしても抱きしめてあげる事も出来ない自分を呪った。

風間はその日を最後に梨花の事を忘れると誓った。

そして時は経ち…雨の日に南と結婚した。

自分の代わりに空が泣いてくれてるんだろうと風間は思った。
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