Spice‼︎
広い資料室に二人きりだった。

「ちょっと来い。」

一番奥のほとんど人の来ない場所まで
梨花の腕を掴んで連れて行くと
両腕で逃げ道を塞ぎ、棚の隅に追い詰めた。

「なんで連絡して来ない?

何度も電話したろ?」

梨花は目を伏せたまま黙っている。

桐原は梨花の顎を掴み、梨花の視線を上げさせる。

「土方といい仲だそうだな?

それで?俺と別れるつもりか?」

「離して…」

左腕で梨花の右腕を抑えたまま桐原が無理矢理キスをした。

「別れられると思ってんのか?」

梨花の瞳から涙が溢れ堕ちる。

「土方と結婚する。」

梨花思っても無いことを口にすると
桐原はもう一度キスをして黙らせる。

「梨花…俺と離れられるのか?」

梨花は桐原に抱きしめられ
離れたくないと思ってしまう。

「別れる…もう……桐原次長とは…逢わない。」

桐原はもう一度キスをして
梨花と舌を絡める。

誰かに見つかりそうなスリルが気分を高揚させていく。

「梨花…別れたくないだろ?」

「もう…やめて。」

社内でこんな事したのは初めてだった。

桐原が離れると梨花は立っていられず
資料室の床に座りこんだ。

「もし、土方と結婚しても…
お前は俺を忘れられないよ。」

桐原が梨花を抱き上げて立たせると
自分の胸の中に閉じ込めるみたいに抱きしめてくる。

「こんなことして…見つかったらどうするの?」

「そんなヘマはしない。

だから梨花…別れるなんて言うな。」

久しぶりに桐原に抱きしめられると
気持ちは揺らいだ。

土方は絶対に風間みたいに桐原に会うのを許してくれないだろうと思った。









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