Spice‼︎
桐原と時間差で資料室から出た。

梨花のカラダはまだ桐原に抱きしめられた記憶が残ったままだ。

桐原との事を思うと仕事が手につかなかった。

「土方次長、すいません。じつは…具合が悪くて…
早退してもいいですか?」

土方は心配そうに梨花を見た。

そして梨花のおでこに大きな手を当てて

「熱は無いな。
どこか痛いのか?」

と聞いた。

痛いのは梨花の胸だった。

本当のことはもちろん言えないから嘘をつく。

「頭がガンガンして…」

「風邪のひき始めかもな。」

心配する土方を見て申し訳なく思う。

だから今、尚更一人になりたかった。

「わかった。一人で帰れるか?」

「はい。」

「タクシー呼んでやるから待ってろ。」

土方の優しさが胸に染みる。

それなのに自分はさっき桐原とあんな事をしてたかと思うと居たたまれない。


土方が呼んだタクシーで家に戻り、
服も着替えずにベッドに寝転んだ。

風間はあれから自分のシルシを付けに来ない。

土方がいとも簡単に梨花を倉庫から救い出した事で
自分の不甲斐なさを感じてるんだろう。

梨花はさっき桐原にキスされた事を思い出す。

思い出すだけで胸がドキドキして苦しくなる。

桐原と別れたくない。

こんな時、風間が側にいて
桐原の記憶を塗り替えてくれたらいいのにと思った。

そう思っていたら、部屋のドアが開いた。

「早退したんですね。

カラダ大丈夫ですか?」

なんと今まで連絡を絶っていた風間が自ら梨花の部屋を訪ねて来た。



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