Spice‼︎
梨花は土方に連れられて病院に来ていた。

夜間治療で真っ暗な待合室で梨花の治療が終わるのを待った。

傷は大した事は無く、
掌を三針ほど縫う程度だったが
梨花のカラダに自分のつけた傷が残った。

「ごめん。カッとして…こんな事になるなんて。」

「いいよ。私が悪いんだもん。」

風間は、梨花の部屋の散らばったガラスを掃除して
そのまま部屋で梨花が治療から帰って来るのを待っていた。

そして2時間くらい経って
梨花が右手に包帯を巻いて部屋に戻ってきた。

「大丈夫だから気にしないで。」

と梨花が微笑んだ。

風間は梨花がケガした手にキスをした。

「利き腕じゃ何かと不自由ですね。」

「包帯で大袈裟にグルグル巻かれてるけど
傷は大した事ないの。

だからこの包帯が取れればすぐに使えるようになるよ。」

「しばらくここに居てもいいですか?」

梨花は嬉しかったが、風間の父である社長が気になった。

ここに入り浸っていたら、
また倉庫に戻されるかもしれないし…

もしかしたら今度は何らかの方法で会社を辞めさせられるかもしれない。

「ダメだよ。社長に見つかったらどうなるの?

私、飛ばされるのはもうイヤ。

それに次は風間くんだって無事とは限らないでしょう?」

「そうだけど…そんな事より梨花さんのそばに居たいんです。」

風間に抱きしめられると
そんな心配はどこかに吹き飛んでしまう。

梨花はこのままどうなってもいいと思った。





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