Spice‼︎
「会社辞めようかな。」

「え?」

「嘘。」

嘘だと言ったけど…
梨花は一瞬、本気で考えてしまった。

桐原と風間の居ない場所で働いた方が
もっと楽だと思ったからだ。

だけど…苦労してようやく入った会社だし、
あんなに大きな会社に2度と入れないだろうし、
あの会社の仕事が大好きだ。

何より楽になったら梨花の恋は長続きしない気がした。

「梨花さん、今は考えないで…
面倒な事は明日になったら考えましょう。」

風間が梨花にキスをして
梨花の思考が止まる。

今は風間の指や舌に翻弄されて風間だけに溺れていたかった。

しかしこの夜、風間が帰らなかった事で梨花の人生にさらなる危機が訪れた。

次の朝、会社に行こうとすると朝から土方に呼びだされた。

「しばらく休め。」

「え?」

「その手じゃキーボードも叩けないだろ?」

梨花は包帯を取って指を動かしてみせる。

「ほら、大丈夫だよ。」

それでも土方はダメだと言った。

「いいから帰れ。

お前の顔を今は見たくないし、
何より…社長から圧力がかかってる。」

「え?」

「社長室にお前と一緒に来いって言われてる。

お前が来たら面倒な事になるに決まってる。

俺が1人で行って来るからお前は来るな。

いいか?俺とお前が結婚するって話す。

それが一番いいと思う。

風間のためにもそれがいいと思う。」

それでも梨花は社長に会おうと思った。

土方がとめるのも聞かず、
社長室へ向かった。






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