Spice‼︎

我慢できずに梨花は土方に向かって叫んでいた。

「好きな人がいる!

でも風間くんじゃない!

その人の為ならどうなってもいいくらい好きな人がいるの!」

土方には誰のことだか全く見当もつかなかった。

風間以外の男がいるなんて考えてもみなくてかなり混乱した。

そしてそれは自分を諦めさせる為の嘘だと勝手に信じ込んだ。

しかし梨花の方はもう2度と土方を部屋に入れたく無くて
土方に向かって

「今度来たら警察に通報する。」

言った。

その一言はプライドの高い土方をかなり傷つけて
その夜から土方は姿を見せなくなった。

万が一のため、次の日の朝、すぐに病院に行き
薬を処方してもらい服用したがそれでも妊娠しない可能性は100%じゃない。

梨花には暫く妊娠の不安が付きまとった、

桐原はあれからまだ連絡して来ない。

風間にも暫く来ないように言ってある。

梨花は一人の夜が続いて不安と寂しさが募って
とうとう桐原に連絡した。

「逢いたくなって。」

桐原はその頃、
仕事で大変だった。

大きなクライアントとの取引が中止になりそうで
連日その件で駆け回っていた。

「梨花、悪い。今、動けないんだ。

仕事が立て込んでて…悪いな。

近々時間作るから…」

電話はそこで切れた。

風間と半同棲してた頃が懐かしかった。

あの時は楽しくて…
桐原に会えなくても風間が近くに居てくれた。

独りで居るのが辛くて近所のバーで飲んでいた。

お酒が入ると寂しさは募って
風間の声だけでも聞きたくて梨花は風間に電話をかけた。





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