ずっと、そばにいたのに。
私は梨子のベッドにダイブして、ゴロゴロと転げまわった。
あのずっと憧れ続けてきたコウちゃんと! あの世界一美しいコウちゃんと! 付き合えるなんて!
「毎日おじいちゃんにお線香あげてて良かった……」
「でもさー、急になんでって思わない? 今まで相手にされなかったのに」
「ハッピーハッピー、ふー!」
「どっちかって言うと、コウちゃんの好みって私のお姉ちゃんみたいな、大人な人じゃん」
「ハッピーハッ……」
「あ、静かになった」
「しゅん……」
「落ち込んだ」
そうなのだ。梨子のお姉ちゃん(玲子先輩)も小中高と同じ私立の学校に通っていて、しかもコウちゃんのクラスメイトだった。
玲子先輩はとにかく美人で、大人で、余裕があって、優しくて完璧な女性だった。中学を卒業したと同時にカナダに留学してしまい、今は日本にいない。
コウちゃんはいっつも玲子先輩に『抱きしめていいですか』とか、『一緒の空気吸ってることに興奮してます』とか、嫌われるような気持ち悪い冗談ばっか言って、周りを笑わせてたし、玲子先輩も笑ってた。
あの頃がとても懐かしい。