ずっと、そばにいたのに。

コウちゃんのお母さんからお金を預かり、嫌がるコウちゃんを引っ張って私は家を出た。

11月の風は思いのほか冷たくて、耳あてもしてくれば良かったと後悔した。

コウちゃんは最初げんなりしていたけれど、だんだん諦めたのか静かになった。

サラダ油を求めに、私達は学校近くのスーパーに向かった。

コウちゃんとスーパーに行くことはおろか、コウちゃんとこうしてこの町を歩くのもかなり久々だった。


「ふらふらすんな、こっち歩け」

「あい」

「金落とすなよ、てかもう俺に預けろ」

「あい」

「俺はお前の母ちゃんか!」


コウちゃんは一人で勝手にしゃべって一人で勝手に怒ってる。

でも私はコウちゃんとお買いものしてることが嬉しくて、スーパーまでの道のりもあっという間だった。
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