どうやらホラーゲームの世界に迷い込んでしまったようです
翌日、夏生は何事も無かったかのように登校してきた。
「昨日はごめんね!!なんか、どうかしてたみたいでさー」
「怖いなら、もうゲームなんてするなよな」
「いやいや、もう大丈夫だから!今日はね、ゲームを持ってきたんだよ。授業終わったら、一緒にやろう?」
「やるわけないだろう」
「そんなこと言わないで!ね、やろうよ~」
どうやら、昨日の事は懲りていないらしい。
「いいから、や・る・な!没収だ!」
「あ、ちょっ」
僕は夏生の手からゲーム機を奪い、自分のカバンの中にいれた。
「このままじゃ、授業中もゲームしそうだからな。放課後まで没収だ」
「ケチー!」
「アホか。ケチでもなんでもねぇよ。勉強しろ受験生」
そう、僕らは受験生だ。
高校3年生の夏という、一番大事な時期。
こんなゲームに時間を取られている暇はない。
「いいか、受験さえ終われば少しぐらい付き合ってやるから。今は先ず目の前の現実を見てくれよ」
「現実、ねぇ」
夏生は会話しながらも、ゲームの恨みなのか僕のカバンから視線を逸らさずに口を開く。
程良くしてチャイムがなり、僕は夏生に教室へ戻るよううながす。
「いいから、ほら。席に戻れ」
「はぁーい」
夏生はしぶしぶ教室へ戻ったが、それはただの一時退却であって諦めたという感じではなかった。
そう、僕は気付くべきだったのだ。
夏生の異変に。